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受験と教育について思うこと

※以下、校内配布の"Baker Times"に掲載内容を加筆した文章です。


 2021年度の入試を終え、無事、当校の生徒は誰一人路頭に迷うことなく進学先を確保することができました。指定公推薦や内部進学生を除くと夏の時点で在籍していた生徒は6名、合格校としては国公立大が1校、関関同立が4校でした。


 共通テストが大荒れしたことで、国公立志望者が第一志望の出願自体を諦めるケースもあり、国公立入試に関しては教室としてまだまだ課題の残る結果となりました。そんな中でも、生徒たちは最後まで本当に頑張り抜いてくれました。結果はどうあれ、僕は皆さんを誇りに思います。


 さて、個人的観測や憶測も含めた話にはなりますけど、僕は大学受験を取り巻く環境は年々厳しくなっているように感じています。子供の数が減り、いわゆる大学全入時代に突入したと言われて久しいですが、私たち学習塾にはそれなりの進学先を希望する生徒が集まります。そのうえで大学入試について考えてみると、やはり競争率はむしろ増しているのではないかと思えてならないのです。


 一番の理由は、一部の大学に人気が集中していることです。大阪でいうと、国公立はいったんおいておくとして、近大と関関同立の人気がずば抜けています。特に近大の人気はもう不思議なレベルです。当然、私たちも入試問題に取り組むわけですけど、ハッキリ言って近大と関関同立ではレベルが全然違う。まぁ偏差値的にもそれはそうなんですけど、じゃあ近大とは偏差値も試験の難易度もそこまで変わらない大学とで合否結果を比べて見ると、近大はやっぱり辛いんですよ、体感的にですけど。競争率がそれだけ高いということなんでしょう。


 大学全入時代とはいえ、人気のない私立大の多くは定員割れに苦しんでいます。学費などの観点から国公立を選ぶ生徒数は常に一定数い続けるし、人気の私立大は入試の門戸を広くしてまで生徒を誘う必要がない。そもそも中高が附属されていて一定数の生徒は確保していますしね。それどころか、例えば今年の関大は英語の試験問題が難化したと受験生内で話題になりました。ようは、空いてる席があるのにみんなが同じ席を奪い合うというかたちで競争率が増している。


 もう一つは、受験攻略に関する知が近年更に、そして急速に深まっていることです。受験までのプランニングや王道ルート、推奨参考書などについての情報が、今やYoutubeで簡単に手に入る。大手予備校は今も健在ですけど、昔の大学受験って、医学部とか「○○大専門」系を除いたら、個別指導はそんなに主流じゃなかった。それが今、主流とはいかないまでもかなり力を伸ばしている。


 ようは、大学受験攻略法を個人にカスタマイズして提供してくれる環境が都市部を中心にどんどん整ってきていて、これに、従来通りずば抜けた教科指導を提供してくれる予備校があると。うちの受験生でも多かったですけど、それらを併用する生徒も増えてきている。結果として、受験攻略のレベルがどんどんあがっている、学力じゃなくて。


 文科省は現場を無視した教育政策をこれでもかというぐらいおろしてくるから、学校現場はその対応に疲弊しきっている。民間は意思決定プロセスが短いので、比較的素早く対応できる。だから塾や私立高がどんどん力をつけるし、そこに通える子がますます有利になる。そうでない子、受験攻略というゲームに参加し遅れた子は、今まで以上に厳しい戦いを強いられる。


 僕は塾人ですけど、この国はこれでいいのかと憂う教育人でもあります。教育が民間を頼りにしすぎると、地方格差や収入格差が如実に影響してきます。そういった子供本人には一切責任がない要素が彼らの人生を大きく左右してしまうと考えると、どうにもいたたまれない気持ちになる。やりきれない心持になる。


 公教育が力を取り戻さない限り、ようは、労働環境が改善され、現場の先生たちにもっとフリーハンドが与えられ、先生という仕事がもっと魅力的な職業になることで、さらに優秀な人材が教師を目指せるような状況にならない限り、日本の教育が健全化していくことはないように思えてなりません。

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